研究課題
海底洞窟性微小二枚貝Carditella iejimensisは殻高・殻長3.5mm以下で,堆積物表層に生息し,貝殻は100%アラレ石である.同種は1年中成長していると推定され,殻高1mm に達するには1 年を要する(Kitamura et al., 2012).沖縄県伊江島沖の大洞窟(最大深度29m) から採取した計60個体の生貝の全殻の酸素同位体比を測定した結果,その値は年間平均水温と海水の年間平均酸素同位体比のプロキシーに成ることが分かった.生貝の酸素同位体比の平均値は,大洞窟の表層堆積物(厚さ5cm,250年分)から採取した死殻の酸素同位体比の平均値(-0.85±0.18‰,47個体)よりも有意に軽く(p<0.01),その差は,1.2度の水温上昇に相当し,これは計測機器記録による過去100年間の沖縄周辺海域の年平均表層水温の1.1度の昇温とほぼ一致する.また,大洞窟のコア堆積物から得られた過去7000年間の死殻の酸素同位体比のほとんどが-1.10±0.18‰よりも重い値をとる.大洞窟内の年平均水温とその周辺の年平均水温(24.4 度)は同じ値をとることから,生貝,表層堆積物,コア堆積物から得たC.iejimensisの全殻の酸素同位体比の変動は,現在の沖縄海域の表層海水温が,過去7000年間の中でも中期完新世温暖期や中世温暖期よりも温暖な例外的な状況にあることを示す.
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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