研究課題/領域番号 |
22540477
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
近藤 康生 高知大学, 教育研究部・自然科学系, 教授 (90192583)
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研究分担者 |
延原 尊美 静岡大学, 教育学部, 教授 (30262843)
松原 尚志 兵庫県立人と自然の博物館, 自然環境評価研究部, 研究員 (30311484)
佐々木 猛智 東京大学, 総合研究博物館, 准教授 (70313195)
栗原 行人 三重大学, 教育学部, 准教授 (10446578)
中尾 賢一 徳島県立博物館, 専門学芸員 (40372221)
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キーワード | 貝類化石 / 現生種 / 進化 / 生物相 |
研究概要 |
現生種化石の最古記録を特定し、その出現時期を明らかにするため、3.1Maにあたる唐の浜層群穴内層下部産の二枚貝の分類について検討した。まず、刻点を持たないGlycymeris (Veletuceta)について、殼形態を詳細に検討した結果、同層の標本は、G、fulgurata(トドロキガイ)に同定できることがわかるとともに、同層には近似の現生種G.vestita(タマキガイ)は出現していないことが分かった。両種がきわめて類似した形態を持つことに加え、現在の土佐湾では、両種の分布域がほぼ同じであることから、G.fulgurataかG.vestitaの祖先種であることが強く示唆された。このことから、鮮新世末、あるいはそれ以後の寒冷化に伴って、G.fulgurataの分布域北縁においてG.vestitaか分化したことが推定できる。G.vestitaの最古記録特定のためには、更新世の化石記録を本研究の精度で詳細に吟味していく必要がある。 また、同じフネガイ目二枚貝であるAnadara sp.についても、詳細な形態の分析を行った結果、本種が、現生種A.kagoshimensis(サルボウ)の祖先種である可能性が強く示唆されるとともに、その進化には異時性が関与していることも推定された。 さらに、同層産のマルスダレガイ目ザルガイ科Fulvia sp.の殼形態と成長について詳しく検討した結果、本種は現生種F.mutica(トリガイ)の祖先種である可能性が示唆された。なお、本種に良く似た現生種としては、フィリピン付近に生息するF.laevigataが挙げられる。 これら3種の産出層は、Meretrix lamarckii(チョウセンハマグリ)やDosinorbis bilunulatus(ヒナガイ)の産出からも分かるとおり、黒潮の影響を受ける開放海岸沖の浅海域を示す一方、それらの推定子孫種はいずれも内湾の生息者であるか、または内湾にも分布する現生種である。以上のことから、外洋に面した上部浅海帯の生息者が、鮮新世末、あるいはそれ以後の気候の寒冷化に伴って、分布域北縁の内湾域においてこれらの現生種が分化したことが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者および分担者は、それぞれの分類群の研究を着実に進めている。また、現生種最古の化石記録を特定する作業を進める中で、その祖先種を特定できたケースがあり、進化のメカニズムやパタンについても新知見が得られるなど、当初想定した研究の展開を越えて、新たな展望も開けてきた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の平成24年度には、各自の担当分類群について、現生種化石の最古記録を整理する。また、研究代表者は、各分類群の成果を取りまとめるだけでなく、生息場所ごとの整理も行う。また、現生種の集中的出現時期を特定し、その背景について考察する。名古屋大学で開催される日本古生物学会2012年年会の機会に、詳細について議論する予定である。
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