研究課題
今年度は、紫外線蛍光反応を用いて、現生種の最古記録を確定する上で有用な二枚貝化石の色彩パタンの復元を試みた。室戸半島西岸の鮮新世穴内層産Glycymeris fulgurata (トドロキガイ)に長波長(365nm)紫外線を遮光状態で照射し、発生した蛍光によって写真撮影した。得られた画像を解析した結果、穴内層産のG. fulgurata の色彩パタンは5つの類型に区分された。最も多い(44%)タイプは色彩パタンをほとんど持たないもので、年輪を含む成長線に沿ったパタンだけが認められた。その他の個体が示す色彩パタンの基本は分岐模様であり、その粗密と形成速度の大小のバリエーションによってさまざまのパタンが生じているらしい。現生二枚貝である本種の典型的な模様として知られているきわめて粗い分岐模様の個体は6%、細かな分岐模様の個体は40%、中程度の粗さのものは頻度もその中間(10%)であった。このほか、放射状の色彩パタンを示す個体も1個体(2%)あった。現生土佐湾産G. fulgurata 個体群では、色彩パタンを欠く個体が多い(47%)のは同様であったが、穴内層個体群のものに比べ、より多様な9類型の色彩パタンが認められた。ちなみに、G. fulgurataと良く似ていて、地理的亜種と見なされてきたこともあるG. vestita(タマキガイ)の色彩パタンははるかに単調であり、穴内層産個体群および現生土佐湾個体群に認められた、中程度の粗さの分岐模様を持つものと良く似ている。ただし、それらが年輪によって途切れるとともに、成長にしたがって消失する傾向がある。このように、土佐湾産個体群では、両種は形態だけでなく、色彩パタンでも識別できる。また、このことは、G. fulgurata が G. vestita の祖先種であることを示唆しており、化石の産出順序もこの推定を支持している。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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徳島県立博物館研究報告
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