研究概要 |
地中海塩水湖より採取されたコア試料(KH06-4,PC5)の解析 コア試料(34°27.02N,22°16.61E,水深2920m,コア長290.5cm)の岩相はcalcareous oozeで,明色(grayish white)と暗色(yellowish orange)の色調変化が,数cm~数10cm間隔で繰り返す.本コアの年代は,酸素同位体層序から約5~21万年を示し,暗色バンドは寒冷期に,明色バンドは温暖期に形成されたことが明らかになった.底生有孔虫群集解析から,Benthic Foraminifera Number/gと貧酸素耐性種と高塩分耐性種,高酸素種の割合を求めた.その結果,明色バンドでは相対的に産出個体が少なく多様性が低い.暗色バンドではその逆の傾向が見られた.また,明色バンドでは貧酸素耐性種(Staintiforthia complanata)や高塩分耐性種(Articulina tubulosa)の産出が多かった.一方,還元環境の指標であるframboidal pyriteが,明色バンドでは多産する.以上のことから,暗色バンドは酸化的環境で,明色バンドは還元的環境で堆積したと考えられる Mo濃度は,暗色バンドでは高濃度であり,明色バンドでは低濃度であった.明色バンドにおけるMo/Al比は、それぞれ0.15±0.04,0.13±0.02であり,地殻中のMo/Al比(0.12)とほぼ一致した.すなわち,明色バンドに堆積したMoは,陸源物質であると考えられ,自生Moは堆積していないと考えられる.Mo湖比は,明色バンド,暗色バンドにおいてほぼ一定(0.77±0.15)であり,地殻中Mo/W比0.8に一致した.Moは,H2Sが発生しない弱還元的環境下では堆積物中に濃縮されないため,本コア試料採取地点では,硫酸還元はほとんど起こらなかったと考えられるが,その他のデータと比較・検討していく予定である
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