研究概要 |
Meedee湖堆積物コア(全長290.5 cm)は,石炭質シルト~粘土であり,明色層,淡褐色層,および暗色層が数cm~数10 cm間隔で繰り返す.底生有孔虫群集解析,pyrite産出量や,CaCO3含有量,全炭素(TC)量の分析から,明色層は還元的な塩水湖内で,暗色層は,塩水湖外の酸化的な水塊において形成されたと考えられる. 5万6000年~18万年前の堆積層において,Mo濃度は地中海や日本海の堆積物と比較して著しく低かった.Mo濃度は,暗色層において高濃度であり,明色層において低濃度であった.淡褐色層では明色層および暗色層の中間の値を示した.Mo/Al比は0.08±0.24であった.この変動幅も日本海北部の堆積物と比べ著しく小さかった.明色層及び淡褐色層におけるMo/Al比は,それぞれ0.15±0.04,0.13±0.02であり,地殻中Mo/Al比の0.12とほぼ一致した.すなわち,明色層に堆積したMoは陸起源であると考えられ,明色層では自生Moは堆積していないと考えられる.Mo/W比は明色層,暗色層,淡褐色層においてほぼ一定で,0.77±0.15であり,地殻中Mo/W比0.8に一致した.Moは,H2Sが発生しないような弱還元的環境下では堆積物中に濃縮されない.従って,コア採取地点では,供給される有機物が極端に少なく硫酸還元がほとんど起こらなかったと考えられる.約5万年~5万6000年前に相当するコア最上部(0~12 cm)では, Mo濃度,Mo/W比はそれぞれ1.3 ppm,2.0で,有意な濃縮が見出された.しかし,日本海の酸化的堆積層におけるMo/W比とほぼ等しかった.この層では,深度290.5~12 cmと比較しpyriteが多く産出している.従って,コア最上部(0~12 cm)では,H2Sが十分に存在し,MoS2が沈殿した可能性がある.
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