研究概要 |
2012年度は、秋吉台真名ヶ岳付近で掘削採取した下部ペルム系石灰岩のボーリングコア試料(真名ヶ岳コア;本研究での掘削は深度100~250m区間)の詳細な岩相記載をもとに堆積環境を推定し、コアにラグーン域を特徴づける堆積サイクルを認定した。またフズリナ化石から年代決定を行い、検討区間は前期ペルム紀アルチンスキアンのChalaroschwagerina vulgaris帯からLevenella leveni帯にほぼ相当することが明らかになった。また詳細な岩相観察から、今回検討した区間全体を通じて微生物岩(microbialite)が多産すること、特に中部のChararoschwagerina vulgaris帯上部からPseudofusulina ex gr. kraffti帯を中心として直径10~20cmにも及ぶ巨大なオンコイド(球状の微生物岩)が特徴的に産出することが明らかになった。一方、既存の帰り水コア(秋吉台科学博物館所蔵)を再検討し、中部ペルム系から石灰質海綿からなる礁堆積物を見いだし詳細に記載した(Nakazawa et al., 2012)。既に秋吉帯石灰岩の最上部石炭系~最下部ペルム系からは石灰藻Palaeoaplysinaを主体とする礁堆積物が見いだされていること(Nakazawa et al., 2011)から、パンサラッサ環礁の主要な造礁生物は、前期ペルム紀の劇的な環境変化(氷室期から温室期への気候期の転換及びゴンドワナ氷床衰退)により石灰藻Palaeoaplysinaから石灰海綿群集へと大きく変化し、その過渡期には巨大オンコイド等の微生物岩の多産で特徴づけられる極めて特異な環境が一時的に形成されたことが推定される。
|