研究概要 |
平成22年度は九州および本州西部の古第三紀内湾性貝類化石群を対象として、以下の調査・研究を行った。 (1) 熊本県天草上島地域 九州の海成古第三系のうち、最も地質年代の古い熊本県天草上島の千巌山層(せんがんさんそう;中期始新世最前期)から産する内湾性貝類化石群集の産出層準と特性を明らかとするため、地質調査を行うとともに貝類化石ブロック試料5点を採取した。 (2) 長崎県佐世保地域と佐賀県玄海地域 九州の海成古第三系で最も地質年代の新しい長崎県佐世保地域の漸新統佐世保層群福井層および加勢層と,これらよりも下位に位置する佐賀県玄海地域の漸新統入野層の貝類化石群の特性を明らかとすることを目的として地質調査を行うとともに、貝類化石ブロック試料各1点を採取した。また、佐世保層群上部の年代を明らかとするため、フィッション・トラック年代測定用の凝灰岩2試料を採取した。 (3) 山口県特牛(こっとい)地域 佐世保層群に対比される山口県特牛地域の日置層群の貝類化石群の特性を明らかとするため、地質調査を行うとともに、貝類化石ブロック試料2点を採取した。 各地域から採取した試料については兵庫県立人と自然の博物館でクリーニング作業を行うとともに、分類学・古生態学・古生物地理学的検討をすすめている。また、フィッション・トラック年代を測定した結果、漸新世を示す年代値(26.4±1,7 Ma ; 31.1±1.4 Ma)が得られた。この結果により、佐世保層群上部の貝類化石群の年代的位置づけが明確となった。
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