研究課題
ロシア・バイカル湖(2011年6-7月)、オホーツク海サハリン島沖(2011年8月)にて、湖底・海底堆積物中のガスハイドレート結晶(GH)採取を目的とした調査を実施した。サハリン島沖では、Lavrentyev海底断層南側の新領域でGHが採取された。ガス組成は昨年度の調査で得られたものとほぼ同じであり、結晶構造は1型で、水和数・解離熱とも従来のサハリン島沖の試料と変わらなかった。なお、前年度はロジスティックス上の問題により液体窒素容器が使用できず、今回初めて同領域で結晶試料を持ち帰り、結晶物性分析を実施することができた。バイカル湖では、前年度に引き続き計8地点でGHが採取され、うち6ヶ所は新地点である。中央湖盆南側のKukuyK-4泥火山では結晶構造II型とみられるGHが発見された。KukuyK-2、K-10泥火山での発見に引き続き、エタンリッチな構造II型GHはバイカル湖では珍しくない存在であることが示された。一方、構造II型GHのゲストガスとしてブタンおよびペンタンが包接されていることが、従来の試料のガス分析結果から示唆されており、今回の調査でも確認されている。そこで、イソブタン・ノルマルブタン・ネオペンタンを構造II型GHの大ケージに入れた人工試料を作成し、PXRD分析およびラマン分光分析を実施した。これらの成果の一部は、2011年7月に英国Edinburghで開催されたガスハイドレート国際会議にて発表され、現在も継続して測定・解析を進めている。ブタン・ペンタンを構造II型の大ケージに入れるためには、メタン等の分子径の小さいヘルプガスの導入が有効だが、ラマン分光分析ではメタンによるラマンピークが大きく分析の障害となるため、現在はラマンピークに影響しない希ガスでの代用を試みている。
2: おおむね順調に進展している
予定通り、オホーツク海サハリン島沖およびバイカル湖にて、いずれも新たな領域で天然GHの採取に成功した。バイカル湖GH試料は輸送上の問題により日本国内での結晶解析が実施できていないが、現地で分解させて持ち帰ったガス試料の分析は既に終了しており、これまでの知見と合わせてGH結晶の素性が明らかにされている。
現在、ブタン・ペンタンを結晶構造II型GHの大ケージに安定して包接させるための、適当なヘルプガスの選定を進めている。将来、ラマン分光分析によって試料非破壊で包接分子の素性を把握するための基礎データとなる。なお、バイカル湖では通関その他に関するロシア側の輸送上の問題により、GH試料の日本への輸送が一層困難となっている。今後は、これまでに採取され国内で保存されている天然GH結晶の解析を進める一方、現地の研究施設で可能な結晶分析項目についても実施していく方向で検討を進めている。
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