研究概要 |
本申請課題は、主成分・微量元素組成およびSr・Nd・Pb同位体組成の分析・解析から、中部九州地域火山フロントで観察されるアダカイト質,及び,非アダカイト質マグマ両マグマの成因関係を明らかにすることでスラブ由来物質の化学組成や物性、及びマントルウェッジとの反応過程を解明することを目的としている。平成22年度は,データの空白域を埋めるため,両子山と阿蘇の後カルデラ期の試料を採取し地球化学的データを得ることを計画した。また,比較のため,桜島の火山岩類の採取と化学・同位体分析も計画に追加し行った。その結果,1)両子山のアダカイト質マグマの化学的・同位体的特徴は沈み込んだスラブの部分溶融とその上に堆積していた陸源性堆積物の部分溶融液の混合と,そのマグマの地殻物質とも反応で説明できることが分かった,2)阿蘇の後カルデラ期のストロンチウム(Sr)同位体は,カルデラ期のマグマの組成と比較して広い組成範囲を示すことが明らかになった。これは,カルデラ期には初生マグマと地殻物質起源のメルトが大規模に混合し比較的均質な組成になったのに対し,後カルデラ期では小規模なマグマが異なる噴出経路を取ったため,地殻物質の不均質の影響がマグマのSr同位体組成に現れたと考えることができる。また,阿蘇の初生マグマはスラブの脱水反応で生じた流体相とマントルウェッジの反応で生じた,非アダカイト質のマグマであったと考えられる。まだ,解析は進んでいないが,NdとPb同位体組成の分析も終了しており,当初の計画を完了することができた。
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