研究概要 |
我々の研究グループは、「Shannonにより提案された5配位Fe^<3+>の有効イオン半径が実際に観測される5配位のFe^<3+>-O距離と著しく矛盾していることが多く、その距離は配位環境(三方複錐面体配位と正方錐面体配位)の違いによって大きく異なる」ことを発見した。本研究では、5配位のFe^<3+>をもつ種々の化合物の単結晶X線精密構造解析から、5配位Fe-<3+>の有効イオン半径の再検討と精密決定を行うとともに、5配位Fe^<3+>の配位環境とその化学結合性の関係を明らかにすることを目的とする。 平成22年度は、5配位Fe^<3+>イオンが三方複錐面体配位をもつFe_3PO_7,BaMg_2Fe_<16>O_<27>,BaTi_2Fe_4O_<11>および正方錐面体配位をもつSr_3Fe_2O_6,YBaCuFeO_<5+δ>,Pb_4Fe_3O_8Cl,FeVO_4の7種類の化合物について、単結晶合成を試みた。その結果、構造解析に耐えうる大きさをもち、良質な単結晶が得られたのは現時点でFeVO_4のみであった。FeVO_4単結晶の合成には、まず固相反応法で粉末試料を合成し、その後、1000℃で5時間保持したのち、1℃/hの冷却速度で700℃まで徐冷した。単結晶の確認は4軸型X線回折装置を用いて行った。Pb_4Fe_3O_8Clについては、単結晶は得られなかったが、単一相の粉末試料の合成に成功した。一方、FeVO_4とPb_4Fe_3O_8Cl以外の化合物については、それらの粉末試料の合成において、不純物相が生成しており、現時点では完全な単一相の合成には至っていない。来年度は、FeVO4の単結晶X線構造解析とPb_4Fe_3O_8Clのリートベルト解析を行い、他の化合物については、単結晶合成を成功させるべく、合成条件を変えて合成実験を引き続き行う。
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