プレート沈み込み帯深部の情報を記録している高圧及び超高圧変成岩の形成条件は、電子線マイクロアナライザー(EPMA)による変成鉱物の組成分析と地質温度圧力計から一般的に求められている。高圧-超高圧変成岩に特徴的に産する玄武岩類を原岩とするエクロジャイト中のオンファス輝石では、酸化物の重量%から陽イオン数を計算して各席に振り分け、Fe^<3+>とFe^<2+>、端成分のモル比を求められており、それらは各元素の分析精度に強い影響を受ける。本研究の目的は、中国大別山造山帯から採取したエクロジャイト中のザクロ石に包有されたオンファス輝石中のFe^<3+>/ΣFeを放射光施設でのマイクロXANES(X線吸収端近傍構造)法で直接分析した結果をもとに、顕微ラマン分光分析とマイクロ光電子分光分析によって鉄の化学状態を求める方法を確立することである。本年度は、これまでの分析で得られたマイクロXANESのスペクトルを(1)XANESスペクトルをノーマライズ、(2)プリエッジ領域の関数フィット、(3)バックグラウンド除去、(4)Fe^<3+>とFe^<2+>のピークのcentroid positionを求めた。さらに、顕微ラマン分光装置を温度および湿度変化の少なく、振動の影響を受けにくい分析室へと移動させた後に、ザクロ石に包有されたオンファス輝石のラマン・シフトを再分析した。マイクロ光電子分光分析は、連携研究者との検討を重ねた結果、平成23年度以降に分析することとした。
|