研究課題
プレート沈み込み帯深部の情報を記録している高圧及び超高圧変成岩の形成条件は、電子線マイクロアナライザー(EPMA)による変成鉱物の組成分析と地質温度圧力計から一般的に求められている。高圧-超高圧変成岩に特徴的に産する玄武岩類を原岩とするエクロジャイト1中のオンファス輝石では、酸化物の重量%から陽イオン数を計算して各席に振り分け、Fe^<3+>とFe^<2+>、端成分のモル比を求められており、それらは各元素の分析精度に強い影響を受ける。本研究の目的は、中国大別山造山帯から採取したエクロジャイト中のザクロ石に包有されたオンファス輝石中のFe^<3+>/ΣFeを放射光施設でのマイクロXANES(X線吸収端近傍構造)法で直接分析した結果をもとに、顕微ラマン分光分析等によって鉄の化学状態を求める方法を確立することである。昨年度までに,マイクロXANES分析のスペクトルの再解析と、顕微ラマン分光装置をより条件の良い分析室へ移設後のザクロ石に包有されたオンファス輝石の再分析が終わっている。本年度は,平成22年度に北米西岸フランシスカン帯から採取して解析を進めているエクロジャイトとその周囲の高圧変成岩の帰属に束縛条件を与えるための地体構造の再検討を行なった.砂質片岩12試料から砕屑性ジルコンを各試料あたり約200個分離し,樹脂に包埋して鏡面研磨後に,香川木学工学部の電界放出型走査電子顕微鏡付属のMini-CLを用いてカソード・ルミネッセンス像を観察撮影し,オシラトリー累帯構造が認められるジルコンのU-Pb年代を京都大学理学部のレーザアブレーション誘電結合プラズマ質量分析計で分析した.さらに,鹿児島県徳之島の四万十帯,沖縄県石垣島の八重山変成帯の塩基性岩および超塩基性岩の産状と分布を調査し,岩石試料の採取を行なった.これらの試料は.共同研究者らとともに解析を進めているところである.
2: おおむね順調に進展している
マイクロXANES分析のスペクトルの再解析した結果については,Island Arc誌の特集号への投稿原稿がほぼ完成している.さらに,顕微ラマン分光分析の結果についても同誌への投稿準備を進めているところである.
ザクロ石に包有されたオンファス輝石のFe^<3+>/ΣFeを求める方法として顕微ラマン分光分析とマイクロ光電子分光分析め両方を用いる計画であったが,後者では鉄の酸化還元状態の定性的な結果しか得ることができない可能性が高まってきた.そこで,本研究課題によるマイクロXANES分析と顕微ラマン分光分析で確立した方法を研究分担者他がマイクロXANES分析でFe^<3+>/ΣFeを得ている試料に適応して検証する.
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Earth and Planetary Science Letters
巻: 321-322 ページ: 64-73
10.1016/j.epsl.2011.12.034
地質学雑誌
巻: 117 ページ: VII-VIII