2003年から2009年にかけて実施した海洋研究開発機構の研究船による研究航海において、マリアナ前弧に分布する蛇紋岩海山から回収した主要な蛇紋岩、変成岩試料について、鉱物共生、鉱物組成を解析し、プレート沈み込み境界域の岩石学的、地球化学的検討を行うとともに、陸上の高圧変成帯における同種の岩石や反応帯の産状、化学組成変化、鉱物共生等を、蛇紋岩海山のそれらと対比・解析し、結果に基づき、沈み込み帯境界域における蛇紋岩化作用および交代作用の特徴を調べ、以下を明らかにした。 (1)マリアナ中部のツインピークス海山において、高圧変成岩が数十メートルの岩塊として蛇紋岩中に産する。これらの高圧変成岩は、藍閃石+パンペリー石、ローソン石+アルカリ輝石の共生で特徴づけられ、低温高圧下で形成された。これら鉱物共生に先立ち、緑色角閃石-エピドート-フェンジャイト-ルチルの共生が認められ、高圧変成作用に先立ちより深所高温部での変成作用を経験した。 (2)マリアナ前弧において、コニカル海山、サウスチャモロ海山、ツインピークス海山の3箇所から高圧変成岩が発見されたことから、マリアナ沈み込み帯において、広範に高圧変成作用が起こっている。 (3)サウスチャモロ海山の藍閃石岩やコニカル海山のフェンジャイト-蛇紋石-アルカリ輝石岩と三波川帯における蛇紋岩体に接するトレモライト岩を岩石学的に解析した結果、これらの岩石類は、沈み込むプレートの上載珪質堆積物とウエッジマントルが接触することによって、交代作用で生じた可能性が高い。
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