一酸化窒素(NO)は、微生物活動や燃焼過程などにより生成し、対流圏オゾン生成や窒素沈着に関わる重要な微量気体であるが、微生物による生成・放出過程には不明な点が多い。NOの窒素・酸素同位体比はこれらの各過程において起源物質の同位体比や反応の同位体効果を反映して特徴的な値をとることが予想され、反応経路の識別に有効な指標になると考えられる。本研究では、微生物起源の低濃度NOに適用可能な、高精度の窒素・酸素同位体比測定法を開発し、種々の生成・消滅過程について環境試料、室内模擬実験試料の測定を通してその複雑な機構を明らかにすることを目的としている。 本年度は測定法の開発に着手した。NOを直接質量分析計に導入し、電子衝撃型イオン源で生成するNO+の質量分析を行うことにより窒素、酸素の同位体比を測定する。高純度NOガス、または高濃度のNO標準ガス(不活性ガスで希釈されたもの)をガスクロマトグラフ-質量分析計(GC-IRMS)に導入する実験を行い、NOの分離・生成条件や窒素同位体比の測定精度を検討した。高純度NOを100nmol以上導入した場合には精度1‰で窒素同位体比が測定可能であることが明らかになった。しかし低濃度希釈試料の場合には主成分とNOの分離・精製条件を改良したり、濃縮操作を行ったりする必要があることが示唆された。
|