研究課題
本研究の目的は、熱水環境に生息する微生物の培養と窒素代謝の同位体分別係数の実験的決定、天然熱水に溶存する有機・無機窒素の安定同位体観測、ならびに環境遺伝子の解析を通して、これまで未知とされた熱水域での窒素動態を体系的に理解することにある。平成24年度は研究実施計画に則り、陸上ならびに海底の熱水域の解析をおこなった。陸上熱水域に発達する微生物生態系では、硫黄酸化に加えて、アンモニア酸化を起点とする一連の窒素のエネルギー代謝が一時生産を支える主要なエネルギー供給反応であるのではないかと言われ出してきた。しかし、これまで熱水域で起きている窒素エネルギー代謝の種類や速度ならびに一時生産速度との関係を明らかにした研究はなかった。本研究では、陸上熱水帯から普遍的に遺伝子が検出される難培養好熱古細菌の集積培養に成功し、この菌がアンモニア酸化を行うことを確認した。またこの菌の行うアンモニア酸化の窒素同位体分別係数ならびに酸素同位体システマティクスをはじめて決定した(論文準備中)。また陸上地下温泉の生物地球化学調査、熱水に溶存する窒素化合物の同位体解析ならびに窒素代謝機能遺伝子の解析の結果をまとめ、アンモニアに富む温泉における窒素動態を定量的に記述するとともに窒素動態と微生物群集の分布・存在量・機能との関係を明らかにした(Nishizawa et al., 2013 GCA)。また、熱水と堆積物の相互作用が特徴的な背孤海盆海底熱水域での窒素動態を明らかとするため沖縄トラフ海底熱水域のコア試料を用いて間隙水溶存窒素化合物ならびに有機物の窒素同位体解析をおこなった(論文準備中)。アンモニアに乏しいマリアナ熱水域やインド洋中央海嶺熱水域については熱水やチムニーサンプルの試料採取を行うとともに、熱水域から分離された超好熱メタン菌の窒素同化代謝の生化学、同位体分別機構の解析を行った。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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