研究概要 |
炭化けい素(SiC)等の硬質半導体では、そのアニールに要求される温度が高いことから従来のイオン注入技術による導電率制御が困難である。そこで、高電流密度のパルスイオンビーム照射によりイオン導入と熱処理を同時に実現する新たな注入法としてパルスイオン注入法を提案し、これに要求される100A/cm^2程度の電流密度と100nsのパルス幅を有するパルス重イオンビーム発生技術の開発を行った。イオン源として従来開発してきた窒素ガスパフプラズマガンに加えて、SiCのドーパントとして期待されるアルミニウムイオンビーム生成のための高強度パルスイオン源としてAl細線爆発型イオン源の開発を行った。これは、アルミニウム細線をパルス通電することで気化、プラズマ化するもので、比較的大電流密度が再現性よく得られる一方、繰り返し動作が困難である。研究では、細線イオン源を用いて100A/cm2の電流密度のイオン源プラズマ生成に成功すると共に、その放射特性、再現性等、イオン源の特性を評価した。また、従来の細線イオン源では困難とされてきた繰り返し動作を可能とするため、1本の細線の中央に給電する方式を提案し、実験を通じて繰り返し動作を実証した。一方、パルスイオン注入で大面積化を実現するため、ビーム加速用電源の大電流化が要求される。そこで、従来用いてきた100kV、10kA、100nsのパルス電源に加えて400kV,100kA,50nsの高強度パルスイオンビーム加速用パルス電源を開発した。同電源にピンチ反射型イオンダイオードを接続し、陽子ビーム発生実験を行い、安定な動作を確認した。
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