研究概要 |
通常のMHDプラズマでは発現しない物性を示すと予測されている拡張MHDプラズマ状態の可否を実験的に検証する一つの方法として,我々は正負2つの非中性プラズマを用いるという新奇手法を提案し,そのプロトタイプ実験装置の開発に着手している.拡張MHDプラズマ,特に2流体効果が発現する2流体プラズマ状態の空間スケール長(特性長)は,イオン表皮厚程度と理論予測されている.イオン表皮厚はイオン密度の関数になっているので,したがって実験的にはイオン密度を下げることで,イオン表皮厚という通常のMHDプラズマでは極めて短い空間特性長を装置サイズと同程度にまで引き伸ばすことができる.そして,この低密度イオン流体として非中性プラズマの一つである純イオンプラズマを用い,また,もう一方の電子流体として純電子プラズマを用いるというアイデアが本開発研究の最大のポイントである. 平成23年度における研究開発の成果は以下の通りである.第一に,純イオンプラズマと純電子プラズマを独立に閉じ込めるための装置の製作を完了した.この装置は直線型の実験装置であり,装置内部に計33個の中空型円筒リングがインストールされている.この円筒リングはアルミ金属上に金メッキを施してある.この33個の円筒リング一つ一つにそれぞれ独立電位を印加することで,2つの正負ポテンシャル井戸を作り出せた.第二に,その正ポテンシャル井戸の底にベータユークリプタイトから射出されたリチウムイオンビームによりイオンプラズマを閉じ込めることに成功し,一方で負ポテンシャル井戸の底に4本のマイクロフィラメントから射出された4本の電子ビームの自己組織化により作りだされた1つの純電子プラズマを閉じ込めることに成功した. 現在,閉じ込め時間の最適化を行いながら,2つの正負非中性プラズマの同時閉じ込めに取り組みつつある.残されている開発課題はミラー磁場の印加であり,それを研究最終年度となる平成24年度に実施して本開発を完成させる.
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今後の研究の推進方策 |
2つの非中性プラズマの重畳実験を精度よく行うためには非中性プラズマの閉じ込めが十分長い必要があり,現在真空度を1桁下げるための改善も進めている.この改善により,非中性プラズマの閉じ込め時間が1桁伸び,10秒程度が達成できると期待している.しかしながら,現在の閉じ込め時間に対する別の問題点として,閉じ込め用バイアス磁場の大きなリップル率も気がかりになっている.上記の真空度の改善によって閉じ込め時間が伸びない場合,この閉じ込め用バイアス磁場発生用直流電源のリップルがボトルネックになっている可能性が高く,この直流電源自体を低リップル型の物へと交換しなければならないと考えている.
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