研究課題/領域番号 |
22540507
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
多幾山 憲 広島大学, 大学院・工学研究院, 教授 (40112180)
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研究分担者 |
難波 愼一 広島大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (00343294)
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キーワード | 慣性静電閉じ込め / ポテンシャル構造 / ドップラーシフト / レーザー誘起蛍光偏光分光法 / プラズマ電場計測 |
研究概要 |
本研究の目的は、慣性静電閉じ込め(IEC)プラズマコアに形成される収束イオンによるポテンシャル構造とバルマーα(Hα)線のドップラーシフトをそれぞれ別な方法で測定し、両者の相関から収束イオンのダイナミックスを解明することである。本年度はIECコアプラズマ内の電位構造を計測し、昨年度得たドップラーシフトの結果と比較検討することである。 IECコアプラズマのポテンシャル分布測定には円偏光LIF法によるプラズマ電場計測法を用いた。この方法はLIFの円偏光度から電場を決定する方法で10V/cmの検出感度を持っている。プラズマに影響を与えない程度の弱磁場(5G程度)を陰極軸(z軸:水平面内)方向に印加した状態で、プラズマコア領域にy軸(鉛直)に沿ってレーザーを導入し、水素ガスに電場計測用プローブ原子として混入させたHe準安定原子の禁制線励起(2^1S-4^1D)を行い、誘起される蛍光(4^1D-2^1P)の円偏光度を測定する。IEC放電装置を水平(x軸)方向に走査することによって、そのx軸方向の空間分布を得る。観測された偏光度とその極性からIECプラズマコア内のポテンシャルプロファイルを求める。この様にして得られたプロファイルのポテンシャルピークと、昨年度得られたドップラープロファイル中の低速成分から求めたポテンシャルピークとはおおむね良い一致を示した。ただし、今年度測定できたポテンシャルプロファイルは低い印加電圧下でのもののみである。その原因としては、この測定はドップラー計測と比べて長い時間がかかるため、高電圧下では放電の不安定さや陰極の絶縁破壊など示発生し、よい結果が得られなかったためである。次年度(前期)は陰極の耐電圧性能を改善し、高電圧下での測定を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今回LIF法により測定されたポテンシャルピーク値が、Hα線のドップラープロファイル中の低速成分から求めたピークとおおむね一致しているという結果は、Hα線の低速成分は、円筒陰極中心部に収束したイオンのポテンシャルにより再加速された水素イオンがバックグラウンドの水素原子や分子との荷電交換反応の結果放射されたものであることを示唆している。しかしながら、LIFによるピーク値の印加電圧依存性に関するデータが不十分である。特に高電圧域では放電の不安定さのため測定できなかった。その原因は陰極の耐電圧の低さにある。
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今後の研究の推進方策 |
次年度(最終年度)前期に陰極の耐電圧性能を改善し、高電圧下でのポテンシャルプロファイルの測定を試みる。 後期には、これまでに得られた結果に基づき、集束イオンのダイナミクスを解明し、論文として公表する。
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