平成22年度は、研究の対象を電磁流体のエネルギー伝達機構の可視化において、これをHall電磁流体のダイナミクスに適用する方向で研究をすすめた。 電磁流体ダイナミクスにおける磁場と速度場間のエネルギー伝達機構と組織構造の関係を可視化するために、ウェーブレット解析を応用した技法を開発し、強い背景磁場が存在するときのエネルギー伝達の可視化に応用した結果を公表することができた。特に可視化技法の「円錐表示」を電磁流体へと応用する技法を定式化することができたことは大きな前進である。 この「円錐表示」による可視化技法の応用範囲を広げるために、Hall電磁流体における磁場と速度場間のエネルギー伝達の機構に着目して、ウェーブレット展開を用いた相互作用解析を行った。この相互作用解析の目的は、計算のコストパフォーマンスを上げるために、解析のターゲットを絞るための基礎的なデータを蓄積することにある。 解析の結果、Hall電磁流体におけるHall項によるエネルギー伝達には、二つのまったく性質が異なる相互作用のあり方があることが分かった。そのうちの一つは高い波数側への輸送で、局所的な相互作用が卓越しており、小さいスケールの構造を次々と生み出していく傾向があることが分かった。もう一つは、低い波数側への輸送で、非局所的な相互作用が卓越しており、磁場の大規模な構造の維持に寄与していることを示唆する結果が得られた。 またHall電磁流体と通常の電磁流体との比較において、エネルギー輸送の振幅には大きな差が見られるものの、定性的な相互作用の傾向には大きな違いが見られなかった。これは両者の輸送量や形成された組織構造の違いが大きかったことに対して、対照的であり非常に興味深い結果であった。
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