研究概要 |
加熱用レーザーにより生成される高速電子ビームが大きな発散角を持つ原因の一つとして,ワイベル不安定性により誘起される準静的磁場の存在が考えられている.そこで,磁場が誘起される場所を固定することにより発散を抑制できる穴あきターゲットを考案した.シミュレーションの結果,3MeV以下のエネルギーの高速電子については,発散角を改善できることがわかった. また,抵抗率の異なる物質間に高速電子が流れると抵抗率の空間勾配に起因して,自己生成磁場が誘起される.先端部をコア近くまで延長し,かつ絞り込んだコーン(とんがりチップコーン)を用いると,この機構により,コーン材と爆縮プラズマ間に磁場が誘起され,発散角の大きい高速電子ビームをコア近くまでガイディングできる.そこで,このとんがりチップコーンを用いた統合シミュレーションを行った結果,比較的Zの小さいDLCやAlをコーン材に用いることで,通常のフラットトップ金コーンに比較して,加熱効率が30%以上向上することが示された. 一方,高強度短パルスレーザーのプリパルス/ペデスタル成分によりコーンターゲット中に生成されるプリプラズマレベルを輻射流体計算により解析した.その結果,大阪大学で実施されているFIREX実験では,30~50μmのスケール長を持つプリプラズマが生成されていることがわかった.また,プリプラズマのコーン材料依存性を調べ,低Zコーンに高Zの物質をコーティングしたコーンが,最適であることを見出した. 更に,高密度コア形成方法として,流体力学的不安定性の影響を受けにくい低速爆縮について2次元輻射流体シミュレーションを実行し,その特性を評価した.その結果,比較的安定して高いρRを達成できるだけでなく,従来爆縮より長時間コアを存続させることが可能であることを明らかにした.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コア加熱効率に大きな影響を与える高速電子ビーム発散角の抑制については,ターゲット構造の工夫による生成時における抑制および自己生成磁場による高速電子のガイディングが評価された.また,プレパルス/ペデスタル成分に起因するプリプラズマの生成シミュレーションを行って実験結果と比較し,最適なコーン材料を見出した.更に,低速爆縮についても,従来の爆縮と比較した特性評価を行い,その優位性を明らかにした.
|
今後の研究の推進方策 |
コア加熱効率を更に向上させるため,外部印可した磁場を圧縮することで磁場強度を高め,高速電子ビームをガイディングする手法について,その効果および特性をシミュレーションにより明らかにする.また,大きな発散角を本質的に持たず,容易にコアに到達できると考えられている陽子ビームを用いた高速点火方式の評価も行う.この場合,加熟用レーザーから生成された高速電子のエネルギーを陽子ビームに変換する効率が重要となる.そこで,効率良く陽子ビームが生成されるようターゲット構造を工夫する.次に,その生成された陽子ビームによるコア加熱を統合シミュレーションし,高速電子を用いたコア加熱と比較・検討する.
|