本研究は、温度依存テラヘルツ分光スペクトルに観測される水素結合ネットワークの形成開裂を体系的に解明し、テラヘルツ波の利点を活かした応用開拓を目指すものである。類縁体間で異なる水素結合ネットワークを有し、結晶構造も特徴的な違いを示す安息香酸、サリチル酸、アセチルサリチル酸について温度依存テラヘルツスペクトルを大規模高精度理論計算により解析した。特に、弱い水素結合を記述する分散力補正を導入した計算を実施することで、全最適構造の結果、原子座標のみならず、格子定数についても1~2%の誤差内で実験を再現し、弱い相互作用で形成される分子性結晶の複雑なテラヘルツ領域スペクトルのピーク同定を著しく改善した。
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