研究概要 |
分子ビームに複数の質量をもつイオンが含まれる場合、光解離実験における運動エネルギー放出を高効率で測定するには、イオン反射を用いて目的とする親イオンの時空間収束性を高めることが有効である。本研究では、V字型反射を1回行う飛行時間質量分析計に画像観測装置を組み合わせた反射型質量選別画像観測法を開発した。本装置では、クラスター親イオンの質量を選別したうえで光解離を行い、解離イオンの質量と運動エネルギーを反射後の飛行時間または位置敏感検出器の2次元平面上での投影像として観測できる。つまり、飛行時間方向に検出器平面を加えた3次元的な測定を行うことができるので、特に低い速度領域と放出角度分布について直接的かつ定量的な測定が可能になった。レーザー蒸発法を利用することにより、Ar_n,Mg^+(ICH_3)_n,MgAr^+_nクラスターイオンの系列を生成することができた。これらのうち、質量選別したMgAr^+とMg^+(ICH_3)について紫外光解離実験を上記の画像観測法によって行った。MgAr^+では基底状態の結合エネルギーを決定するこそができ、Mg^+(ICH_3)については光解離イオンMgI^+を画像として観測することができた。観測された画像ではMgI^+イオンの放出において分子の構造と動力学が反映されていることが確認された。本装置をさらに高精度なものにするためには、Velocity Map Imagingの条件を利用した電極が有効と考えられ、電磁場イオン軌道シミュレーションをもとに新しい電極を設計した。
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