研究課題/領域番号 |
22550004
|
研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
山北 佳宏 電気通信大学, 大学院・情報理工学研究科, 准教授 (30272008)
|
キーワード | 多環芳香族炭化水素 / 振動分光 / 分子制御 / 画像観測 / 低温分子 / 質量分析 |
研究概要 |
1.多重反射質量選別光解離実験- 2段加速によって時空間収束性を高めた質量分析計を開発し、質量選別したMrAr^+およびMg^+(ICH_3)クラスターイオンについて紫外レーザー光を照射したときの光解離反応の動力学を研究した。位置敏感型の画像観測装置を用い、解離イオンの解離光の偏光に対する角度分布と空間的拡がりを測定した。得られた画像をBASEXプログラムにより3次元断層像に変換し、速度と角度分布の情報を獲得した。その結果、光励起に伴う励起エネルギーの収支とその動的挙動を明らかにすことができ、MgAr+の並進エネルギー放出は604±100cm^<-1>、異方性パラメータはβ=0.98と計算され、基底状態における結合エネルギーD_o=1222±120cm^<-1>を得ることができた。 2.気相分子線源の開発 金属分子錯体・半導体クラスター・生体関連分子・機能性分子を気相中に分子線として生成するための装置を設計した。この装置では、マトリックス支援レーザー蒸発イオン化法「(MALDI)を利用することができる。さらに金属原子をレーザーで蒸発できる仕様とするため、金属ロッドを回転させることのできるパルスモーター回路を製作した。Mg^+I(ICH_3)_nクラスターイオンについて生成効率のレーザーパワー依存性を調べたところ、Mg^+I(ICH_3)_<n-1>が支配的に生成することが分かった。 3.真空紫外コヒーレント光の発生 希ガス中における共鳴4波混合で真空紫外領域のコヒーレント光を発生させるための装置を製作し、超音速分子線として冷却した分子の2重共鳴分光を行うため、レーザー誘起蛍光(LIF)と多光子イオン化を観測する装置を製作した。ベンゼン環にセレン原子が結合したセレノアニソールの分子内回転の安定性と低振動数モードにおける電子状態効果を実験と計算から明らかにし、多環芳香族炭化水素の集合体の安定性を理論計算により研究した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分子イオンの制御技術をイオンイメージングの技術を利用し、多重反射質量選別光解離実験に成功することができたから。特に、東北大学から電気通信大学へ装置を移転した後も、新しい環境のもとで装置の立ち上げと拡張が順調に進行している。
|
今後の研究の推進方策 |
現在の装置では2段加速で親イオンの質量選別をしたうえで、イオンの反射で解離イオンの質量選別をすることができるようになっている。この装置を改良し、多重反射を利用すれば親イオンの時空間性はさらに向上させることができると考えられる。また、レーザーの波長を掃引し分光を行うための装置開発をさらに進める必要がある。一方、多環芳香族炭化水素などのナノカーボンやヘテロ原子を含むベンゼン誘導体などの理論計算を並行して進めることにより、より大きな分子系の構造安定性と電子構造を先験的に研究してゆくことが有効と思われる。
|