研究概要 |
本研究では,スーパーオキシドラジカル(O_2^<・->)つが関与する反応の場として,クラスター(気相分子集合体)を用いることによって,(1)気相における新規なO_2^<・->反応を開拓する,(2)溶液におけるO_2^<・->反応の機構を解明することを目的とし,平成22年度には以下の成果を得た. 1.新規負イオンperoxy型SO_4^-の同定:スーパーオキシドラジカルとSO_2の反応は,大気環境化学の観点から多くの反応速度論的な研究の対象であり,付加生成物SO_4^-としてperoxy型異性体OO-SO_2^-の可能性が示唆されていたが,これまで実験的に確認されていなかった.本研究では,SO_2/O_2クラスターへの電子付着過程で生成するSO_4^-の幾何構造・電子構造を光電子分光とab initio計算を併用して調べ,初めてperoxy型SO_4^-を実験的に同定し,その電子構造を明らかにした. 2.Peroxy型SO_4^-の生成機構の解明:O_2^-・(H_2O)_n+SO_2反応でperoxy型SO_4^-が生成することを示し,大気反応におけるperoxy型SO_4^-の生成機構を分子軌道レベルで明らかにした.本研究により,peroxy型SO_4^-は解離限界SO_2(^1A_1)+O_2^-(^2П_<gi>)に相関し,大気中で予想される主反応O_2^-・(H_2O)_n+SO_2では,実質的に0_2^-が余剰電子を保持したままSO_2を攻撃することよってSO_2+O_2^-→SO_2^-+O_2の電子移動反応が抑制され,peroxy型SO_4^-が選択的に生成することが判った. 3.Peroxy型SO_4^-の反応性の確認:上述のperoxy型SO_4^-がスーパーオキシドラジカルとしての電子構造を部分的に保持していることを利用して,SO_2/O_2クラスターへの電子付着過程により[SO_2-OO-SO_2]^-型のS_2O_6^-の生成を実験的に示した.
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