研究課題/領域番号 |
22550008
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
小田切 丈 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教 (80282820)
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キーワード | 2電子励起分子 / 解離 / 対称性分離 / 崩壊ダイナミックス / 飛行時間測定 / 準安定水準 |
研究概要 |
反応物理化学では、ポテンシャルの概念はダイナミックスを理解するための重要な鍵となるが、分子多電子励起状態においては、それは非局所な複素数となる。本研究ではこの特異なポテンシャル上でのダイナミックス解明を目指し、半古典モデルの検証を行う。そのため、対称性分離した水素分子2電子励起状態からの準安定解離フラグメントH(2s)の運動エネルギー測定のための実験手法を確立し、量子状態を可能な限り特定した断面積を測定することを目的とする。 平成23年度は、前年度に開発した実験装置のテスト結果を吟味し、装置の評価を行った。その結果、開発した検出器では、準安定水素原子H(2s)よりむしろ高リドベルグ水素原子の検出感度が高く、目的とする断面積測定には不向きであることが判明した。そこで、新たに永久磁石を利用した荷電粒子除去機構を導入し、検出系を変更することにより効率的なH(2s)原子検出の方法へ装置改良を行った。その結果、H(2s)原子検出感度が高リドベルグ原子のそれよりずっと大きくなり、装置開発の目途がおおむね立ったと言える。ただし、高エネルギー加速器研究機構放射光研究施設の運転モードがシングルバンチ運転からハイブリットモード運転に変わり、入射光パルス間隔が624ナノ秒から約170ナノ秒と短くなってしまったため、マイクロ秒スケールのH(2s)原子の飛行時間を正確に測定するためには、余計な入射光パルスからのH(2s)信号を「間引く」機構のさらなる工夫が必要である。現在、「間引く」ためのクエンチャー電極の形状改良、および、パルス電圧印加用のパルサー変更の検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
震災の影響により高エネルギー加速器研究機構の放射光研究施設が半期使用できなかったこと、当該施設の運転モードがシングルバンチ運転からハイブリッドモード運転に変わったことにより、装置開発のための十分な試行錯誤ができなかったことによる。
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今後の研究の推進方策 |
すでに、「研究実績の概要」にも述べたとおり、放射光研究施設のハイブリッドモード運転に対応するための装置上の工夫が必要である。具体的には、準安定水素原子H(2s)のマイクロ秒程度の飛行時間測定のため、約170ナノ秒間隔でやってくる入射光パルスによる信号を「間引く」必要があるが、「間引く」ためのクエンチャー電極形状の設計、および、クエンチャー電極にパルス電圧を印加するパルサーの選定、を検討している。
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