研究課題/領域番号 |
22550012
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
安藤 耕司 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90281641)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 電子移動 / プロトン移動 / 量子動力学 / 電子状態 / 分子シミュレーション |
研究概要 |
本研究の目的は、溶液、固体、生体分子などの凝縮系/分子多体系における電子移動、励起移動、系間交差、プロトン移動、およびそれらが協同的に起こる過程について、量子効果を適切に取り入れながら、現実的な系に適用可能であるような有効な近似シミュレーション手法を開発し、応用研究を推進することにある。特に、本申請者が近年開発している三つの新手法、量子古典混合リウヴィル動力学法、準量子的時間依存ハートリー法、準量子的原子価結合波束法を基盤として、近似精度向上のための基礎理論の整備、応用範囲の拡大を目指した大規模計算手法の改良と実装を遂行する。平成24年度の研究実績は、以下のようにまとめられる。(1) プロトン移動性分子結晶における協同的誘電相転移の研究を、従来の古典モンテカルロシミュレーションから量子モンテカルロシミュレーションへ拡張し、同位体混晶の混成比の関数としての相図を計算して平均場近似との比較検討を行った。(2) プロトン移動反応の量子波束シミュレーション手法を確立するために、準量子的波束分子動力学法理論を拡張し、水中の水素結合組み換えダイナミクスへの応用した。(3) 原子価結合電子波束法を反応における電子ダイナミクス研究へ拡張する一つの方向として、基準振動解析による励起エネルギー計算を行った。(4) 前年度までに開発したタンパク質中の長距離電子移動経路解析の新手法を、光合成反応中心におけるキノン間の非ヘム鉄錯体を介した電子移動へ応用し、実験で見出された金属イオン置換への依存性の微視的起源を議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の4課題について着実な進展があり、最初の3課題について原著論文発表に至った。4番目の課題は、現在論文投稿準備中である。(1) プロトン移動性分子結晶における協同的誘電相転移の研究を、従来の古典モンテカルロシミュレーションから量子モンテカルロシミュレーションへ拡張し、同位体混晶の混成比の関数としての相図の計算と平均場近似との比較検討した。(2) プロトンポンプの量子波束シミュレーション手法を確立するための準量子的波束分子動力学法の拡張および水中の水素結合組み換えダイナミクスへ応用した。(3) タンパク質中の長距離電子移動経路解析の新手法を、光合成反応中心におけるキノン間の非ヘム鉄錯体を介した電子移動へ応用した。(4) 原子価結合電子波束法から電子ダイナミクスの研究に向けた基準振動解析による励起エネルギー計算を実行した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、電子波束を原子価結合法に適用した新しい化学結合理論について、計算効率の向上と適用範囲の拡大を目指し、次の2方針で研究を推し進める予定である。(1) 従来の球型から楕円球型へガウス波束を拡張する。(2) ダイナミクス計算プログラムを実装し、化学反応における電子動力学や励起状態の計算を実行する。また、長距離電子移動経路解析については、確率力学を用いた新しい理論手法の開発を目指す。
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