研究概要 |
1.クロラニル酸-ピリミジン(1/1)1水和物の^<35>Cl核四極共鳴周波数の温度変化を測定し,198Kに固相-固相相転移を見出した。示差走査熱量測定(DSC)においてもこの相転移に帰属できる熱異常を観測した。これらの二固相について225Kと120Kで単結晶X線構造解析を行い,両方の固相でクロラニル酸のプロトンがピリミジンへ移動し,さらにそのプロトンがピリミジンと水分子間の水素結合中で無秩序状態となっていることを明らかにした。この無秩序状態は^<35>Cl核四極共鳴のスピン-格子緩和時間の測定より,動的なものであること,また,相転移に伴い低温相では高温相の単位格子の2倍の格子となっていることを明らかにした。これらの知見は,学術誌Acta Crystallographica Section CとHyperfine Interactionに発表した。また,クロラニル酸-モルフォリン(1/1)の単結晶X線構造解析の温度変化を行い,クロラニル酸間の水素結合中の無秩序状態にあるプロトンの占有率が,温度変化とともに変化していくことを見出した。この知見は分子科学討論会で発表した。 2.クロロニトロ安息香酸-キノリン類系のプロトンの無秩序化を伴う短い水素結合をもつ化合物の探索を行った。キノリン系として4-メチルキノリンと6-メチルキノリンを取り上げ,種々のクロロニトロ安息香酸との単結晶試料の作成と単結晶X線構造解析を行った。さらに,クロロ安息香酸-キノリン系の化合物についても単結晶試料の調整と単結晶X線構造解析を行った。3-クロロ-2-ニトロ安息香酸-4-メチルキノリン(1/1)および4-クロロ-2-ニトロ安息香酸-6-メチルキノリン(1/1)において,プロトンの無秩序化を伴う非常に短い水素結合を見出し,現在その温度変化について解析を行っている。これらの一部の結果は学術誌Acta Crystallographica Section Eに発表した。
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