研究概要 |
1.クロラニル酸-5,5'-ジメチル-2,2'-ビピリジン(1/1)とクロラニル酸-1,5-ナフチルリジン(1/1)化合物の^<14>N核四極共鳴周波数の温度変化を測定し,反強誘電相-常誘電相転移機構について調べた。いずれの化合物においても、反強誘電相ではクロラニル酸のプロトン移動に伴う非等価なN原子(N^+-H...OとN...H-O)が存在し、常誘電相ではN原子は等価(N...H...O)となることを明らかにし、これが相転移機構の重要な鍵をなっていることを示した。また、クロラニル酸-ピロリドンおよびクロラニル酸-ピペリドンの(1/1)と(1/2)結晶の調製と単結晶X線構造解析を行い、クロラニル酸-ピペリドン(1/2)結晶においてクロラニル酸のプロトンがクロラニル酸とピペリドンのO...H...O水素結合中で無秩序状態となっていることを明らかにした。これらの知見は,学術誌Phys.Chem.Chem.Phys.とActa Crystallographica Section Cにそれぞれ発表した。 2.クロロニトロ安息香酸-キノリン類系のプロトンの無秩序化を伴う短い水素結合をもつ化合物の探索を行った。キノリン系として4-メチルキノリンと6-メチルキノリンを取り上げ,種々のクロロニトロ安息香酸との単結晶試料の作成と単結晶X線構造解析を行った。その結果の一部は分子科学討論会で発表した。2-クロロ-4-ニトロ安息香酸-キノリン(1/1)および4-クロロ-2-ニトロ安息香酸-ピラジン(2/1)の結晶構造解析結果は学術誌Acta Crystallographica Section Eに発表した。さらに,クロロ安息香酸-フタラジン(1/1)化合物についても単結晶試料の調整と単結晶X線構造解析を行い、プロトンの無秩序化を伴う非常に短い水素結合を見出した。この結果はActa Crystallographica Section Cに発表した。
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