研究概要 |
レーザー蒸発法により溶媒和金属イオンを気相中に生成し,質量分析法により溶媒分子数ごとにクラスターを選別・分離した上で,光解離分光法によりその赤外スペクトルを測定した.得られた赤外スペクトルを解析して,溶媒和金属イオンの構造を決定した.また,量子化学計算により溶媒和金属イオンの電子構造や幾何構造,赤外スペクトルを予測し,実験結果との比較を行った.本年度は,以下の3課題に関して研究を行った. 1.Ag^+(CH_3OH)_n:n=3には2配位構造が共存するが,その割合は約15%に過ぎず,大部分は3配位構造であった.また,n=4および5においも3配位構造が支配的であることが分かった.3(あるいは4)配位を好むという点で,Ag^+(CH_3OH)_nとAg^+(H_2O)_nの配位構造は類似しているが,2配位を好むCu^+(H_2O)_nとは対照的であることが判明した. 2.V^+(NH_3)_n:n=4では,すべての溶媒分子が金属に直接配位した4配位構造が支配的であった.また,理論計算では平面4配位型構造が最安定であった.n=5になると溶媒分子間の水素結合がみられることから,配位数は4であることが分かった.さらに,n=5-8は共通の平面4配位構造を核に持つことが判明した. 3.Co^+(H_2O)_n:理論計算によると,n=3の配位構造はT字型であり,配位の余地がある.しかし,n=4において,4番めの水分子はCo^+に直接配位せず,水素結合により第2溶媒和圏を占めることが分かった.さらにn=5および6においても,T字型の配位構造が保持されることが分かった.Co^+の水和過程の初期段階では配位の不飽和が生じることが判明した.
|