研究概要 |
イオン液体については、難燃性などの性質から電気デバイスの新しい溶媒として応用研究が盛んになされている。一方で、高い粘性を示すためイオン液体と分子性液体を混合して用いる場合が多い。しかし、これらの混合状態をミクロスコピックに明らかにした研究は少ない。本研究では、電解質でありながら非極性溶媒ベンゼンおよびその誘導体に溶解するイミダゾリウム系イオン液体C_nmim^+TFSA^-に注目し、その溶存状態を分子レベルで解明することを目的としている。 まず、極性溶媒であるメタノールとC_nmim^+TFSA^-(アルキル鎖長n=4-12)との混合をSANS, NMR, ATR-IR法で観測した。両者の混合はメタノールモル分率0.8≦x_M≦0.995の領域で不均一であった。メタノール分子がイミダゾリウム環やTFSA^-との間にC-H…O水素結合を形成する。したがって、メタノールは主にイミダゾリウム環やTFSA^-から成る極性ドメインに会合体を形成する。このことがアルキル基から成る非極性ドメインとの間に濃度ゆらぎを生み出す。また、最大不均一性を示すモル分率はアルキル鎖長によらずx_M=0.97であった。このことは、極性ドメインにおけるメタノール会合体の形成にはアルキル基はほとんど影響しないことが原因であると結論した。次に、非極性溶媒であるベンゼンとC_<12>mim^+TFSA^-との混合を上述の手法および広角X線散乱法により観測した。両者の混合は、ベンゼンモル分率0.9≦x_<BZ>≦0.995で不均一であり、x_<BZ>=0.99で最大不均一性を示した。このモル分率はUCSTのそれと一致する。両者の混合にはイミダゾリウム環とベンゼンとの陽イオン-π相互作用が寄与しており、イミダゾリウム環とベンゼンが数分子スタックした会合体が形成されることを考察した。しかし、ベンゼン分子とイミダゾリウム環の相互作用が飽和するとベンゼン分子がアルキル基から成る非極性ドメインの周りにC-H-πやπ-π相互作用による会合体を形成する。このことが不均一性の原因であることを結論した。
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