研究概要 |
平成22年度の研究によりイミダゾリウム系イオン液体C_<12>mim^+TFSA^-とベンゼンとの混合は、ベンゼンモル分率0.9≦x_<BZ>≦0.995の狭い領域において強い不均一性を示すことがわかった。両者の混合にはイミダゾリウム環とベンゼン環とのπ-πやC-H-π相互作用が影響していることを結論した。平成23年度では、ベンゼン誘導体であるトルエンおよびトリフルオロトルエンとC_nmim^+TFSA^-(n=2-12)との混合をSANS,ATR-IR,NMR,HOESY法を適用することにより観測した。その結果、トルエンとC_<12>mim^+TFSA^-との混合の不均一性は、ベンゼンほど高くないことが明らかになった。これは、トルエンメチル基がイミダゾリウム環とのπ-π相互作用に立体障害をもたらすことにより、イミダゾリウム環とトルエン分子による会合体形成を弱化することによると考察した。さらに、トルエンメチル基とイオン液体アルキル鎖との分散力も比較的均一な混合に寄与していると考えられた。 一方、SANS測定の結果はC_<12>mim^+TFSA^-とトリフルオロトルエンとの混合が均一であることを示した。HOESY法によりイオン液体アルキル鎖とトリフルオロメチル基との顕著な相互作用が認められており、このことが均一混合の原因であると考察した。震災により原研実験用原子炉JRR-3を用いたSANS実験が延期になっており、鎖長n=2-10のイオン液体とトリフルオロトルエンとの混合を観測できていない。しかし、n=2のイオン液体では非混合モル分率領域があることがわかっていることから、鎖長が短くなるほど混合の不均一性が増加することが考えられた。イオン液体アルキル鎖とトリフルオロメチル基との相互作用が弱くなることが不均一な混合をもたらしている理由であると考えた。 C_<12>mim^+NO_3^-と水との混合についてSANS測定を行ったところ、イオン液体が水中で球形ミセルを形成することを明らかにした。このミセルは、既報のCl^-やBr^-を陰イオンとしたイオン液体が形成するミセルよりも安定である。NO_3^-がイミダゾリウム環水素原子と強く相互作用するためと結論した。
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