研究課題
常温で液体状態の電解質であるイオン液体は、メタノールなど極性溶媒のみならず、非極性溶媒であるベンゼンやその誘導体にも溶解する。この興味あるイオン液体の特性を分子レベルで明らかにすることを目的として、Bis(trifluoromethanesulfonyl)amide (TFSA-)を陰イオンとするイミダゾリウム系イオン液体C12mimTFSAとトルエンおよびα,α,α-トリフルオロトルエン(TFT)との混合溶液を小角中性子散乱(SANS),ATR-IR,NMR法により観測した。これらの結果を平成23年度に研究したベンゼン系と比較して置換基の効果を議論した。SANS実験は、ベンゼンと同様にトルエンもC12mimTFSAとミクロスコピックには不均一に混合することを示した。しかし、そのミクロ不均一性はベンゼン系よりもわずかに低い。これに対し、TFTとC12mimTFSAの混合溶液はSANS実験のスケールにおいても均一混合であることを示唆した。すなわち、C12mimTFSAとアリール溶媒との混合は、ベンゼン > トルエン >> TFTの順番に不均一であることがわかった。これらの結果には、イミダゾリウム環とアリール溶媒分子のベンゼン環との陽イオン-π相互作用によるイオン液体-アリール溶媒分子クラスターの形成が寄与していると考えられた。置換基サイズの増加とともに陽イオン-π相互作用が弱くなるためイオン液体-アリール溶媒分子クラスターの形成が弱くなることがミクロ不均一性の順番の原因である。実際、ATR-IR法で観測したベンゼン環のC-H面外変角振動や1H, 13C NMR化学シフトは置換基サイズ増加と陽イオン-π相互作用の弱化の関係を明確に示した。さらに、2次元NMRスペクトルは、TFT-CF3基とイミダゾリウムドデシル基との相互作用がTFT系の均一混合の一因であることを示唆した。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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