研究課題/領域番号 |
22550021
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
前田 はるか 青山学院大学, 理工学部, 准教授 (80260199)
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キーワード | 原子・分子物理 / メゾスコピック系 / 低温リュードベリガス |
研究概要 |
まず、磁気光学トラップ中に冷却されたRb原子を空間的、エネルギー的に素性の明らか(即ちwell-defined)なリュードベリ状態に励起するためのシングルモード波長可変レーザーの開発を行った。これはwell-defined状態の生成が、メゾスコピックガスの動力学を支配する原子間相互作用を精密制御するためには必須であることが判明したことに基づく。この場合、必要とされる励起レーザーの波長が460nm付近にあることから、920nmの外部共振器型ダイオードレーザーの出力の倍波を、色素により原子励起に十分の強度まで増幅させる作業を行った。この作業は現在も進行中であり、近い将来には完成することが見込まれる。更に、トラップ極低温高励起原子のマイクロ波精密分光、或いは量子状態の精密制御を実行するための準備実験として、周波数チャープマイクロ波を用いたリュードベリ原子の多光子遷移実験を行った。ここではチャープマイクロ波によりリュードベリ準位間に多光子断熱高速遷移が誘起される条件を定量的に解明することに主眼をおき、得られた研究成果は論文として発表した。本実験により長距離原子間相互作用をnsオーダーの短時間内に変化させることができることが明らかにされた。また、この方法により通常は生成に大きな困難の伴う高い軌道角運動量状態への励起が可能であることが判った、直角運動量状態にあるトラップ原子の精密分光は殆ど行われておらず、新たな高精度データの取得が期待される。最後に、二つの軌道角運動量状態のみから成る量子重ねあわせ状態(波束)の生成をリュードベリ原子を用いて試みた。この様な状態の生成と観測は、原理的には冷却リュードベリガスから多原子分子を生成する手段の一つとなり得、実験で確認することが強く望まれるものであった。この様な背景の下に本実験は行われた結果、波束の生成とその制御に成功を修め論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
震災の影響でしばらくの間本研究に関する実験ができない状況が続いた。また、甚大な被害では無いものの研究室にある他の実験装置の修復や本実験装置全体の再アライメント等々の作業に予期せぬ時間をとられたため、当初描いていた計画達成度に対して多少の遅れがあることは否めない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
「9.研究実績の概要」で述べた波長可変レーザーシステムの作成を早急に終え、その後にまずはそれを用いて高角運動量状態の精密分光や人工分子の生成実験を行う予定である。 また、準備実験として一つの軌道角運動量状態からなる波束の生成およびその観測、リュードベリ原子の多光子イオン化の制御実験などを同時に遂行することで、本研究の目的である、MOT中で強い原子間相互作用に基づいく新奇な原子・分子反応のメカニズムの原理の幾つかを詳細に解明することを目論む。
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