研究の目標は、基本的な分子の光電離過程について、低速光電子回折と見なすことができる光電子運動エネルギー領域におけるダイナミクスを実験的に調べ、理解することである。 2010年度は、これまで得られているデータの解析を進めるとともに、理論的な解析法の準備も進めた。また、10kVまで得られる定電圧電源を準備し、コインシデンス運動量画像装置の引き込み電場を増強した。小さな直線分子について運動エネルギー250eV程度までの分子座標系光電子角度分布(MFPAD)を測定可能なことが確認できた。しかしながら、実験装置の電極表面が試料分子により汚染されると、精度よくMFPADが測定できないことも確認された。注目したOCS分子の測定では、速やかに表面電極が汚染されてしまったため、光電子回折として解析に耐えうる実験データを測定することができていない。2011年度中に、このような汚染に強くなるよう装置を改良し、実験的研究を続けていく予定である。 さらに、eTOFを利用した新しい実験装置の製作を進めている。これにより振電準位を分離した測定が可能になる。しかし、光源として必要な放射光のシングルバンチモードが、廃止されることになり、新しい光チョッパーの開発が必要になった。これについても2011年度中に、実証試験機の完成を目指して、設計中である。
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