研究課題/領域番号 |
22550025
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
足立 純一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 研究機関講師 (10322629)
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キーワード | 光電子回折 / 基本気相分子 / 放射光 / 内殻光電離 |
研究概要 |
研究の目標は、基本的な分子の光電離過程について、低速光電子回折と見なすことができる光電子運動エネルギー領域におけるダイナミクスを実験的に調べ、理解することである。 10kVまで得られる定電圧高圧電源を準備し、現有のコインシデンス運動量画像測定(CO-VIS)装置に高電圧が掛けられるよう改良を行ってきた。また、高電圧印加の妨げとなる装置電極の汚染に対して強化するため、電極表面に不活性金属を蒸着する改善を行った。この改良により、大きな運動エネルギー(240eV程度まで)を持って飛び出す光電離過程について解離反跳座標系光電子角度分布(RFPAD)の測定が可能になった。これにより、基礎過程としての光電離ダイナミクスについて、より幅広い運動エネルギーを系統的に議論することが可能になった。また、RFPAD測定を利用した応用研究として、将来的に時間分解分子構造決定実験を行うことを計画している。その基礎となる、RFPADが原子間の結合長の情報を直接反映している可能性について、検討できるようになってきた。そこで、基本的な分子であるフッ化メタン分子系CH_nF_m(n+m=4)および装置を汚染しやすいOCS分子ついて、CO-VIS装置を用いたコインシデンス測定を行いRFPADの測定を開始した。現在、これらの分子については実験・解析を継続中である。 また、以前に測定したCOおよびCO_2分子の分子座標系光電子角度分布(MFPAD)およびBF_3分子、NO_2分子のRFPADのデータ解析を進め、理論研究グループと協力し論文としてまとめた。 一方、振電準位を分離する高分解能でのMFPAD測定について、昨年度、時間-デジタル変換器を準備し、測定システムの構築を進めることができた。しかし、新たな実験要素を開発する必要が生じたため、これについては、他の研究資金により、新しい放射光用の光チョッパーの開発を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的としていた分子系について、従来よりも高い運動エネルギーを持って電子が飛び出す光電離過程まで実験を行うことができるようになった。その解析についても、単純な分子であれば可能であることが明確にできている。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の2つの柱は、より幅広い分子系への適用と高運動エネルギー領域での振動分離を目指した高分解能化である。幅広い分子系への展開は、計画通りに実験・解析を進める。一方、高分解能化を目指した装置開発は、本研究課題では進めることが不可能になったため、他の研究費の補助を受けて、研究を継続することになった。
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