本研究は、マイクロ秒オーダー間隔での連続計測が可能な高速・高空間分解能2次元型X線検出器を開発することをテーマの主軸とし、高い分解能をもつ時間・空間分解X線吸収微細構造分光法(XAFS法)を構築し、機能性物質・材料の一過性化学反応や、ナノメートルオーダーの3次元構造をもつ薄膜デバイスの相変化ダイナミクスを構造学的に解明するための要素技術を確立することを目指した。 基礎となる検出器技術はハイブリッド型ピクセル検出器で、微細電極化された半導体ピクセルセンサーと読み出し用集積回路をインジウムバンプで接合して形成されている。センサー部には、320ミクロン厚の高抵抗n型シリコン単結晶の全空乏層型シリコンウエハーを用い、碁盤の目状に陰極電極が75ミクロン間隔でアレイ化されている。本検出器開発は国際研究協力協定を結ぶスイスのパウル・シューラー研究所の協力の下で実施し、最終年度となる今年度で512×1024ピクセルの実機第1号機を完成させた。時分割測定に必要なフレーム率は24kHzで、時間分解能としては40マイクロ秒に相当する。また、大型放射光施設SPring-8のXAFSビームラインBL14B2を用いての評価実験を実施し、深さ分解XAFS測定に於いて2nm以下の分解を達成するなど、目標性能をほぼ達成できていることを実証した。 本年度は本研究課題の最終年度となるが、本課題の成果を受け、今後、大型放射光施設SPring-8のXAFSビームラインに於いて一般ユーザーに本分析技術を提供する予定である。また、超高速X線回折測定やX線発光分光とその磁気円二色性研究などへの展開を計画しており、次世代放射光実験を推進する分析装置となることが期待される。
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