研究概要 |
ウミホタルの生物発光基質ルシフェリンと共通の母骨格を持つイミダゾピラジノン誘導体を研究対象として、発光の高効率化に働く化学励起機構の解明と化学発光の高性能化を目指し、2つの項目について研究を進めた。 [項目1]化学励起機構における電荷移動の関与についての知見を得るため、化学発光特性に及ぼすπ共役置換基効果を調査した。このため、イミダゾピラジノン環の6位にオリゴチオフェン基を導入した誘導体を系統的に合成し、生物発光のモデル反応条件となる有機溶媒中での化学発光特性(反応速度、量子収率、発光極大、反応収率)を調べた。この結果、置換基のπ共役系の拡大に対応して化学励起効率が上昇することを見出した。この結果を理解するため、化学励起に関わるにジオキセタノン中間体とその熱分解の遷移状態、発光体分子について密度汎関数計算を行い評価を行った。この結果、ジオキセタノン環が分解する遷移状態において、π共役置換基から分解部位への負電荷の流入が起こることが予想され、ジオキセタノン分解における電荷移動が化学励起の高効率化に寄与することが示された。 [項目2]化学励起における反応中間体の配座の意義に関する知見を得るため、人工反応場による化学発光特性に及ぼす配座固定効果の調査を開始した。人工反応場との疎水的相互作用を増強するため、疎水性の3,4,5-(トリヘキシルオキシ)フェニル[(RO)_3Ph]基をイミダゾピラジノン環の2位に導入した誘導体の合成を目指した。メチレンを介した(RO)_3Ph基の導入には至らなかったが、イミダゾピラジノン環の2位に直接(RO)_3Ph基を導入した誘導体の合成に成功した。この誘導体の化学発光性の調査を現在進めている。
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