研究概要 |
ウミホタル生物発光系の発光基質イミダゾピラジノン化合物を対象として、発光の高効率化に働く化学励起機構の解明と化学発光の高性能化を目指した研究を進めて下記の成果を得た。 [項目1]化学励起過程に及ぼすπ共役置換基の影響を調査するため、効果的なπ共役を示すフェニルエチニル基をイミダゾピラジノン環に2個導入した5,6-, 5,8-, 6,8-二置換体を合成した。非プロトン性有機溶媒中での化学発光特性(反応速度、量子収率、発光極大波長、反応収率)を調べた結果、6,8-二置換体が発光の効率向上と長波長化に働き、高い化学励起効率を保持した分子設計に有効なことがわかった。 [項目2]化学励起の際のジオキセタノン中間体の配座の役割を調査するため、人工反応場を用いた疎水性イミダゾピラジノン誘導体の化学発光特性を調べた。2,3,4-および3,4,5-トリヘキシルオキシフェニル基を2位に導入した疎水性誘導体を合成して用い、逆ミセル存在下にて化学発光の観測に成功した。さらに効率を評価するための反応条件の最適化が必要な状況である。また、密度汎関数計算によりジオキセタノン中間体の配座の違いが分解遷移状態の電子的性質の変化に寄与することが確認され、化学励起の際の人工反応場による配座固定の効果を評価する基礎が固まった。 [項目3]置換基効果の未解明部位としてイミダゾピラジノン環の2位に注目し、2-フェニル基上の置換基を変化させた誘導体を合成して化学発光特性の調査を行った。この結果、置換基は反応速度に影響するものの、発光効率と波長への影響が小さいことがわかった。密度汎関数計算の結果と合わせ、ジオキセタノン中間体とその分解遷移状態、発光体の励起状態においてフェニル基のπ共役が働きにくい電子的性質を持つことが判明した。従って、2位のフェニル基の化学修飾は化学発光特性を保持した分子改良に有効なことがわかった。
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