研究課題/領域番号 |
22550032
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
依田 秀実 静岡大学, 工学部, 教授 (20201072)
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研究分担者 |
高橋 雅樹 静岡大学, 工学部, 准教授 (30313935)
仙石 哲也 静岡大学, 工学部, 助教 (70451680)
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キーワード | 複素環 / アルカロイド / ポリヒドロキシ / 立体異性体 |
研究概要 |
本年度の研究実施成果 (1)昨年度に引き続き、研究分担者1(高橋)とともに構造相関と活性発現のための分子軌道計算を含めたシミュレーションを行った。さらに、単離構造決定を手がけた連携研究者の北陸大学、浅野直樹教授および富山大学、加藤敦准教授らと密接に情報交換を行うとともに、構造決定についての詳細な情報を受けつつ研究を進めた。 (2)この間、有機合成化学を専門とする研究分担者2(仙石)とともに、博士課程学生と協力して合成実験を行った。当面の標的化合物であったhyacinthacine B1,B2の初の簡便かつ高選択合成を達成したことは既に報告した。さらに昨年度は同様の手法を用いてhyacinthacine C2,C3の合成検討進めた結果、その立体異性体を含めた合計4種類すべてを合成することに成功したことを報告した。今年度は新規なピペリジンアルカロイドであるBatzellaside類の幅広い生理活性調査を目的とした合成研究を行った。Batzellaside類は、海綿Batzella sp.より単離された極めて珍しい海洋生物由来のピペリジンアルカロイドであり、表皮ブドウ球菌に対し抗菌活性(最小発育阻止濃度6.3μg/mL)を示すがこれまでに合成例は皆無である。本研究の目的はこれ以外の優れたメタボリックシンドローム抑止作用を狙うものである。まずアラビノースより15段階の官能基変換を行い、ピペリジン誘導体を得た。これへのアリル化反応はトリフルオロメタンスルホン酸tert-ブチルジメチルシリル存在下アリルトリメチルシランを添加することにより進行し、84% deのジアステレオ選択性でアリル体を与えた。このオレフィンに対し、ジヒドロキシル化とそれに続く酸化的開裂を行いアルデヒド基へと変換し、さらにノニルGrignard試薬付加により、分離可能なジアステレオマーであるアルコールへと誘導した。得られたジアステレオマーのうちの主成分に対して全保護基の脱保護を行った結果、エピ体ではあるが初の8-epi-batzellaside Bの全合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、平成24年度である最終年までにピロリジジン環を持つアルカロイド、hyacinthacine B1,B2およびC2,C3に関する合成を達成目標としていたが、すでに2年間でこれらを達成するだけでなく、新規なピペリジンアルカロイドであるbatzellaside類についても、8-epi体ではあるがその合成を完結しているため。
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今後の研究の推進方策 |
海綿Batzella sp.より単離された、極めて珍しい海洋生物由来のピペリジンアルカロイドであるBatzellaside類についてはこれまでに全く報告例がないため、今後は分離可能なジアステレオマーとして得られた副成分であるアルコールを用い、天然物の持つ全立体を合成するとともに、未確認の絶対配置についても世界に先駆けて同定しようと計画している。可能であれば合成経路の改善により、短段階かつ効率的な合成プロセスの確立を目指したい。
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