研究概要 |
1. 研究分担者1(高橋)とともに構造相関と活性発現のための分子軌道計算を含めたシミュレーションを行い、単離構造決定を手がけた連携研究者の北陸大学、浅野直樹教授(前薬学部長)および富山大学、加藤 敦准教授らと密接に情報交換を行い研究を進めた。 2. この間、天然物合成化学を専門とする研究分担者2(仙石)とともに、大学院学生と協力して合成実験を行った。当面の標的化合物であったユリ科の植物である Scilla socialis より単離、構造決定された糖代謝の阻害作用を有するhyacinthacine B1, B2および C2, C3については、入手が容易な (S)-(-)-2-ピロリドン-5-カルボン酸を出発原料とし、精密な官能基変換を行うことで全収率20%以上での初の全合成に成功した。 同様の活性発現が期待されるポリヒドロキシアルカロイドとして、2006年に新規にマダガスカル島西海岸に生息する海綿Batzella sp.より単離、構造決定された(+)-batzellaside A, BおよびCが挙げられる。これらは海洋生物由来では極めて稀なピペリジンアルカロイドであり、表皮ブドウ球菌に対して抗菌活性を示すことが知られているが、現在までに合成報告例はない。そこで本研究では、L-アラビノース誘導体とL-ピログルタミン酸を出発物質とし、ジアステレオ選択的なアリル化反応による多置換ピペリジン骨格形成を鍵工程とすることで、二通りの簡便かつ高立体選択的な(+)-batzellaside Bの全合成を達成するとともに、それらの誘導体の構築方法を確立した。
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