研究課題/領域番号 |
22550034
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
大須賀 秀次 和歌山大学, システム工学部, 准教授 (50304184)
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キーワード | 芳香族複素環化合物 / 合成化学 / 有機EL / 蛍光 / りん光 / 白色発光材料 / 三重項励起状態 / エキシマー |
研究概要 |
本研究課題では、ヘテロ原子の特性をうまく活用して新規発光材料を合成するとともに、青色発光材料単体から白色発光有機EL素子が得られる発光機構の解明、および白色発光有機EL素子が得られる発光材料の構造の条件を明らかにすることを目的としている。 本年度はまず、多置換ベンゾジチオフェン誘導体の合成を効率的に行うため、キーとなる誘導体であるテトラブロモベンゾジチオフェンの合成に関して、反応温度、濃度、使用する臭素の当量について最適化を行った。また、従来から行ってきたテトラブロモ体を経てα位の二つのプロモ基を脱プロモ化してβジブロモ体を得る方法以外に、β位にプロモ基を有するオレフィンの光環化反応も検討を行った。しかし、反応中にプロモ基の切断が進行し、モノブロモ体や無置換体が副生することがわかったので、現時点ではテトラブロモ体を経る方法がベストであることがわかった。 現時点では、白色発光を得るにはチオフェン環のβ位に位置する置換基の影響でベンゾジチオフェン骨格がゆがんでいることが、構造的に重要ではないかと考えている。そこで、立体的な混み具合の影響および電子的な影響を調べることを目的として、β位にメチル基を有するオレフィンの光環化反応によってβ位にジメチル基を導入した誘導体を合成した。 また、発光材料を構成するベンゾジチオフェン部位およびトリフェニルアミン部位単独の各発光特性について、詳細に検討した。その結果、発光材料にトリフェニルアミン部位が結合していなくても、ベンゾジチオフェン部位のβ位にジフェニル基が結合していると、5Kにおいては、一重項からとみられる発光帯が420nm付近に、常温では観測されない発光帯が570nm付近にそれぞれ観測され、これらはELスペクトルのピークとほぼ一致することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、βジメチル体などの新規誘導体を合成したほか、発光材料を構成する個別の部位の発光特性を測定することで、特異的な発光をもたらしている部位をほぼ特定することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
23年度の研究により、ベンゾジチオフェン部位のβ位にジフェニル基が結合することで、特異な発光が得られることがわかった。そこで、硫黄原子が導入されていることの重要性を検討するため、ベンゾジチオフェン骨格のかわりに炭素原子のみからなるフェナントレン骨格からなる誘導体の合成及び発光特性の検討を行う予定である。 一方、多置換ベンゾジチオフェン誘導体の合成のキーとなるβジブロモ体の合成を再現性良く行えないことが、多置換ベンゾジチオフェンの合成上の問題点として上がっている。そこで、引き続き、合成方法の最適化を行っていく予定である。
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