研究概要 |
シリル基とボリル基をオルトフェニレンで連結した骨格に由来する反応特性を明らかにするため,o-ジヒドロシリル(ジメシチルボリル)ベンゼン(1)の合成法を確立し,その反応性を明らかにした。 o-ブロモ(ジメトキシシリル)ベンゼンをEt_2O中,-78℃でtert-BuLiを用いてリチオ化し,続いてフルオロ(ジメシチル)ボランを反応させることで,o-(ジメトキシシリル)(ジメシチルボリル)ベンゼンを合成した。これをTHF中,LiAlH_4を用いて還元したところ,ケイ素原子上と同時にホウ素原子上も還元されたリチウムヒドロボレートが得られた。このヒドロボレートをhexane中,過剰量のBF_3・OEt_2で処理することで,シリル(ボリル)ベンゼン1を高収率で得た。 o-フェニルシリル(ジメシチルボリル)ベンゼン(1a)をトルエン還流下で加熱すると,ケイ素原子上に水素原子とメシチル基,ホウ素原子上にメシチル基を有するジベンゾシラボリン2aが収率72%で得られた。ジフェニルシリル体1bでは,ケイ素原子上にフェニル基とメシチル基を有するジベンゾシラボリン2bが収率51%で得られた。1bの反応をp-キシレン還流下でおこなうと,反応時間の短縮と収率の向上が見られた。この反応は,ケイ素原子上の水素原子とホウ素原子上のメシチル基が交換してヒドロボラン中間体を与えた後,ヒドロボラン部位とケイ素原子上のフェニル基との反応による分子内環化が進行した結果であると推測している。ベンズアルデヒド共存下で熱反応をおこなうと,アルデヒドへのヒドロボリル化が進行し,対応するアルコキシボランが得られることから,ヒドロボラン中間体の存在を確認した。 このようにして新規含典型元素π電子系化合物ジベンゾシラボリンの合成法を開発することができた。
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