研究概要 |
タンパク質立体構造の新しい解析法として、研究代表者らが2005年に開発した新世代の蛍光検出円二色性(FDCD)測定装置の適用を検討し、この方法の特長と可能性を見出し報告(Anal. Biochem. 2012, 430, 179-184)した。このことにより、反応途中の、あるいは注目する環境に置かれたタンパク質について、同測定法により特定部位の立体構造変化をピンポイントで解析できる可能性を示した。この研究では具体的に、以下の三つの点を明らかにした。(1) 以前の測定装置で問題となっていた測定時のアーティファクトは、研究代表者らの開発した新世代のFDCD測定装置によって有機小分子で解消されていたのと同様、タンパク質への適用においても完全に解消された。(2) この方法をpH制御により二次構造と三次構造の変性を別々に観測できるメトミオグロビンに適用することにより、タンパク質のFDCDスペクトルは主に三次構造の変化を鋭敏に反映することを示した。(3) 蛍光ラベルを導入したカルモジュリンに適用し、カルモジュリンと結合して構造を変化させる機能性ペプチドを共存させる実験により、目的のタンパク質(ここでは蛍光カルモジュリン)の構造変化だけを選択的に観測できることを明らかにした。 さらに、棒状構造を含み両端に任意の芳香族アミノ酸と蛍光ラベル基をもつものを系統的にそろえたモデルペプチドライブラリーを、固相ペプチド法により合成中である。これまでにヘキサプロリンを棒状構造として含むペプチドを合成したが、ライブラリー構築までは至っておらず、構造とFDCDスペクトルの相関までは明らかでない。今後も引き続き、この実験系に適した蛍光ラベルを選び出して系統的なペプチドライブラリーを充実させ、FDCD理論構築への試みを継続する。
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