研究概要 |
π電子系化合物の光化学的な機能性(近赤外線吸収特性、二光子吸収特性、発光特性)に着目し、このような性質を持つ新しいタイプのπ電子系を開発する際に基盤となる化合物群の創出を目的とする。具体的には、特異なπ電子系を持つことで知られるアズレンの電子構造をもとに、1)典型元素の特性をブレンドすることによりHOMO-LUMOギャップの小さいアズレン誘導体を構築するとともに、2)光機能化学的に有用なπ電子系との連結によりハイブリッド型分子を形成することで、新しい光応答性分子を提示する。まず、1)については、HOMO係数の大きいアズレン5員環部の1,3位に電子供与性基として作用するフルオロ基を導入し、LUMO係数が大きい2,6位には電子受容性能の高いボリル基やホスホリル基を導入することに成功した。特に、フッ素化に関しては、種々の反応条件の検討により、穏和な条件下で効率的なフッ素化を可能にする有用試薬を見出すことに成功した。また、ホスホリル基のアズレン骨格への導入部位が光機能特性に重要な効果を及ぼすことも明らかにし、アズレンのπ分能能を反映した結果と言える。一方、ボリル基の反応特性を活かしてカップリング反応によりビアズレン系へ展開するとともに、類縁体としてエチニル基を挟んだジアズレニルアセチレン誘導体に展開することも可能となった。2)に関しては、光化学的に有用な機能性π電子系として知られるホスホールとアズレン系の連結によるハイブリッド型分子の構築にも成功し、レドックス特性や発光特性などの光化学的特性を明らかにした。
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