研究課題/領域番号 |
22550039
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
村藤 俊宏 山口大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (40253140)
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キーワード | ヘテロ原子 / 非ベンゼノイド / アズレン / アザアズレン / 光機能性 |
研究概要 |
アズレン誘導体の多くは、その構造に由来したπ-πスタッキングを形成することが知られている。つまり、構造が互いに異なるアズレン誘導体は異なったπ-πスタッキングを形成し、これにより固体状態で呈色に差が生じると考えられる。大環状機能性色素であるポルフィリンに比べ、アズレンはコンパクトな分子でありながら様々な呈色状態を示すため、わずかな分子構造の違いが結晶構造に反映されやすいと言える。本研究ではこのような考えに基づき、分子構造の違いがアズレン間のπ-πスタッキング様式の違い、すなわち固体状態における呈色の違いに反映される系の構築を検討した。そのような試みとして、アズレニルホウ酸にアミノ酸ユニットをイミノ結合を介して導入したところ、アミノ酸の構造の違いが固体状態におけるアズレン誘導体の呈色の違いに反映されることを見出した。アズレニルホウ酸は、水素結合を介して自己集合によりネットワーク構造を形成することが予想されるため、このネットワークにより結晶構造を築き、アミノ酸ユニットの構造の違いがπ-πスタッキング様式の違いを誘起し、これが呈色の違いに現れたと考えられる。さらに、これらのアズレニルホウ酸誘導体のホウ素上で不斉誘導を行い、生成したジアステレオマーを光学分割することで、ジアステレオマー間に呈色状態の違いが見られるか検討した。生成するジアステレオマーは、アミノ酸由来のキラル中心と不斉誘導により生じたホウ素上のキラル中心を持つ。したがって、ホウ素上の置換基R'がアミノ酸ユニットの置換基Rに対してシス、あるいはトランスの配置をとると考えられ、その立体構造の違いがスタッキング様式に差を生じ、呈色状態に反映されると考えられる。様々な溶媒を用いてジアステレオマーの分割を試みたが、各ジアステレオマーの単離には至らなかった。分割条件を検討中である。一方、アズレンの5員環内(1位)に窒素原子を導入したアザアズレンがDNAにインターカレートする特性を利用して、HeLa細胞に対して強力な細胞毒性を示す縮環型アザアズレンの合成に成功した。バイオプローブとしての機能も同時に付与するため、チオフェンやトロポンを縮環させて蛍光特性の向上を図ったが、現在のところ顕著な電子的効果の発現には至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初より予定していた研究計画通りに進んでいる。設計した分子の合成も順調に進み、おおむね予想した成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
アズレン系ならびにアザアズレン系において蛍光特性の飛躍的な向上を図るため、緻密な分子設計を行い、光機能性の光度化を目指す。具体的には、分子軌道計算による振動子強度の予測を利用して、分子構造の最適化を行う。
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