研究概要 |
ピレンを構成単位とする有機発光体の実用的な一般性の高い合成法を開発し、構造と物理的及び光化学的特性との相関関係を明らかにした。本研究では縮合多環芳香族化合物を構成単位とする有機発光体の簡便な合成ルートの開発がKey Stepとなるが、本申請者が本研究に着手する以前にピレン系化合物合成の際に開発したtert-ブチル基を芳香環上の保護基として用いる手法で行った。例えば、ピレンをtert-ブチル化し、次いで鉄粉存在下、臭素化を行うことにより、4,5,9,10-テトラブロモピレンの合成に成功した。さらに、本物質からパラジウム触媒下での薗頭カップリング反応および鈴木カップリング反応を行うことにより蛍光性発色団の位置選択的な導入に成功した。同様に、一連のアリールエチニルクロモフォアおよびアリール置換ピレン誘導体を系統的に合成し、クロモフォアの配置・数による発光挙動を従来の対応するベンゼン誘導体との比較を行い、π-共役系の広がりに基づく影響を溶液中・結晶状態の両方から明らかにすることが出来た。縮合多環芳香族化合物を基体とする新規な有機EL材料を創製するとともに、そのEL発光特性の評価を行い、発光素子材料としての有効性を明らかにするなど、研究実施計画に基づいて多くの研究成果が得られている。本研究成果は、有機EL材料の構築への重要な指針を与え、今後のEL素子研究開発に寄与することが大きい
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今後の研究の推進方策 |
本年度は本物質を出発原料として種々の巨大縮合多環芳香族化合物を合成し、それらの発光挙動を溶液中 及び固体状態で評価する。例えば、ピレンテトラオンと1,3-ジフェニルプロパン-2-オンと塩基存在下での縮合反応後、ビスシクロペンタジエノンを経由して、ジフェニルアセチレンとのDiels-Alder反応により巨大縮合多環芳香族化合物を合成する。本系においては既存のペリレン、ベンタセンおよびコロネンに比較してπ-共役系の広がりに基づく発光効率、良好な色純度、素子寿命の向上および劣化の抑制の改善が十分に期待され、巨大π共役平面構造に基づくカラム状構造へのユニークな自己組織化(スタッキング)が可能である。さらに、ピレンテトラオンと例えば1,2,4,5-テトラアミノベンゼンとの縮合反応から新奇ベルト状縮合多環芳香族化合物を合成し、発光特性を評価する。さらに本成果を基にポリマー化を行い次世代の高分子有機EL材料への応用へと展開する。
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