空気中の酸素をそのまま利用する触媒的有酸素酸化反応により、ビス(アルキルヒドロペルオキシ)化反応を行い、複素環を含むバタフライ型有機過酸化物の合成を検討した。次に、ヒドロペルオキシ化反応とエンドペルオキシ化反応の選択性は何に基づくかを調べた。得られた結晶性安定型ビス(アルキルヒドロペルオキシド)類を有機酸化剤として用いた反応の検討については、平成23年度までにできなかった。また、合成できた新規ヒドロペルオキシド類について、生理活性試験(殺虫試験、抗菌活性試験、除草試験)を平成23年度中に行い、生理活性の有無を調べた。 1.テトラミン酸とテトロン酸誘導体の有酸素酸化反応:どちらの反応からもバタフライ型有機過酸化物は得られなかったが、片方がヒドロペルオキシド、もう片方は閉環してエンドペルオキシドとなった化合物を良好な収率で得ることができた。このことから、ヒドロペルオキシ化反応とエンドペルオキシ化反応の選択性はカルボニル基の性質に基づくと推定できた。 2.反応性の検討:テトラミン酸から得られたヒドロペルオキシ体は空気中室温で容易に一酸化炭素の放出を伴って分解し、安定な結晶性オキサゾリジノン類へ定量的に変換されることを見出した。 この分解反応にはBaeyer-Villiger型転位反応が含まれていると考えられ、極めて興味ある反応と思われる。この反応については平成24年度にさらに詳しく調べる予定である。 3.生理活性試験:本研究で用いた原料や反応で得られた生成物はすべて新規化合物であり、生理活性試験を行った。その結果、幾つかの化合物は殺虫効果と殺菌効果をある程度示したが、その他の化合物は全く活性を示さなかった。
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