研究課題/領域番号 |
22550042
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
清水 敏夫 首都大学東京, 大学院・理工学研究科, 教授 (50192612)
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キーワード | クラウンエーテル / 不飽和環状化合物 / 分子修飾 / 包接挙動 / ホスト・ゲスト化学 / チアクラウンエーテル |
研究概要 |
本研究では、研究代表者が今まで研究してきた不飽和および飽和不飽和混合系チアクラウンエーテルの機能性材料への応用を目指し、置換基を導入する足掛かりとしてベンゼン環が縮環した不飽和ベンゾチアクラウンエーテルの合成を試み、その基本的性質および銀イオンとの錯形成能を検討した。 その結果、ベンゼン-1,2-ジチオラートとシスジクロロエテンとの反応により、縮環したベンゼン環とシス二重結合を交互に併せ持つ18員環不飽和ベンゾチアクラウンエーテルをベンゾジチインと共に得ることに成功した。また、部分構造を予め合成することにより、環化収率を上げることに成功した。ベンゼン環には予め官能基を導入しておくことが可能であるので、この研究により、ベンゼン環上に官能基を有する不飽和ベンゾチアクラウンエーテル合成が可能となった。この18員環化合物は結晶でありX線結晶構造解析により結晶構造を明らかにした。その結果、硫黄原子は全てほぼ平面上にあり、三つの硫黄が内側を向き、ベンゼン環が外側に開いた丸く薄い構造をしていることがわかった。また、その基本的物性として、酸化還元挙動および紫外吸収スペクトルの測定を行った。CV法により調べた酸化電位を、既に合成に成功している対応する非縮環不飽和チアクラウンエーテルおよび飽和不飽和混合系チアクランエーテルの酸化挙動と比較することにより、その酸化特性を明らかにした。また、紫外吸収スペクトルは対応する最小員環(ベンゾジチイン)と比較し特徴を調べた。18員環不飽和ベンゾチアクラウンエーテルと銀イオンとの錯形成を調べたところ、トリフルオロ酢酸銀と1:1錯体を形成することがわかった。X線結晶構造解析により、二つの18員環の間に二つの銀イオンが挟まれた構造であることも明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H23年度の最後には、不飽和ベンゾチアクラウンエーテルのベンゼン環上への置換基の導入に取り掛かる予定であったが、得られた化合物の物性および錯形成を検討することを先に行ったため、順番が逆になった。しかし、やがては行う必要のある研究であるため、24年度の計画を調整することにより、全体としての計画に遅れは出ていないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究はおおむね順調に進展しており、今後は、他の員数の不飽和ベンゾチアクラウンエーテルの合成と置換基の導入を行い、その物性および錯形成を検討し、その特性を元に機能化を目指す。また、平行して飽和不飽和混合系チアクラウンエーテルの合成を行い、不飽和系との特性の違いを明らかにする。この計画を遂行するにあたっての大きな問題点は無いと考えている。
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