研究概要 |
キラルなフェロセニルアジドと末端アルキンからのクリックケミストリーを用い,トリアゾール環上にイオウ原子,フェロセン環上にリン原子,またその逆のパターンのThioClickFerrophos配位子を新規に開発した。ThioClickFerrophosのファインチューニングを行い,すなわちイオウ上の置換基を種々代えることで,生物活性物質として重要なプロリンエステルの合成に有効なアゾメチンイリドとアルケンとの1, 3-双極子付加反応の立体選択性に関し研究した。プロリンはアミノ酸の一種であり,これを骨格に持つ化合物は薬理および生物活性を示すので,本反応を立体選択的かつ効率よく行うことは意義がある。酢酸銀とThioClickFerrophos錯体触媒を用いて,グリシンイミノエステルとアクリル酸エステルとの環化付加を行うと,反応は円滑に進行し,プロリンエステルが生成した。この際endo体のジアステレオマーが主として生成し,exoはほとんど生成せず,endo体の鏡像体過剰率は95% ee以上となり,極めた高い光学収率が得られた。イオウ原子はトリアゾール環上に,イオウ置換基としてtert-ブチル基の場合が最適の配位子であることが分かった。本触媒を抗C型肝炎ウィルス剤の合成に応用したところ,70% eeの鏡像体過剰率でその中間物質が得られた。選択性を向上する研究を現在行っている。 光学活性ジアミンは生物活性を示す物質として重要であり,これの合成法としてグリシンイミノエステルとイミンとのMannich反応が知られている。上記の触媒をこの反応に応用すると,二つのジアステレオマー,syn体とanti体がそれぞれ95% eeの鏡像体過剰率で得られた。
|