研究課題/領域番号 |
22550044
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
福澤 信一 中央大学, 理工学部, 教授 (50173331)
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キーワード | 有機化学 / 合成化学 / 不斉合成 / 不斉触媒 |
研究概要 |
不斉配位子として,従来のトリアゾール環がフェロセンの側鎖に結合したタイプのClickFerrophosを改良して,立体障害の大きなホスフィン基をフェロセン上に導入したClickFerrophosを合成した。立体障害の大きなホスフィン基としては,市販されている3,5- ジメチルフェニル基(xylyl)および3,5-ジメチル-4-メトキシフェニル基を持つホスフィンを選んだ。パラジウム触媒を用いるO-トオリフルオロメチル化サリチルアルデヒドとアリルスズとの連続するアルデヒド基のアリル化とトリフラート基の分子内Heck反応に改良型ClickFerrophos配位子を応用した。反応は,円滑に進行し,メチレンインダノールが生成物として得られた。光学収率をキラルカラムを装備した液体クロマトグラムで決定したところ,通常のフェニルホスフィンClickFerrophosでは80% eeの光学収率であったが,改良型のClickFerrophosは90% eeという高い光学収率を与えた。置換O-トオリフルオロメチル化サリチルアルデヒドを合成し,反応の置換基効果に関して研究を行った。メチル,メトキシ基のような電子供与性基は無置換のモノと同程度の収率(80%)および光学収率(90% ee)を与えるが,塩素基や臭素基のような電子吸引性置換基は生成物の収率を低下させた(50%)。しかし,光学収率には影響なく,高い鏡像体過剰率で対応する生成物が得られた。 アルキルアリルスズの毒性を考慮して,反応後アルキル基の残らないテトラアリルスズをアリル化剤として用いて反応の改良を試みた。反応は進行するものの,わずか20%という低収率であった。 結論として,合成上有用な光学活性メチレンインダノールが高い鏡像体過剰率で合成できる触媒の開発に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トリアゾール環を有するキラルフェロセニルホスフィン配位子の合成は目的通り達成され,その金属錯体は種々の金属錯体が触媒する不斉有機反応を予定通り高い光学収率で触媒する。トリアゾールのようなヘテロ環で機能化されていないフェニル基のような置換基を持つキラルフェロセニルホスフィン,例えばTaniaphosと同じ不斉有機反応でその性能を比較すると,多くの基質でClickFerrophosの優位性が明らかになっているから。
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今後の研究の推進方策 |
クリックケミストリーを用いることで,容易にトリアゾール環のようなヘテロ環で機能化されたキラルフェロセンが合成できることが分かった。この手法を拡張し,いろいろなタイプのキラルフェロセンの骨格が構築を推進してゆくい。現在までに開発したClickFerrophosのトリアゾール環は,フェロセンのアルキル側鎖に結合しているが,今後は,フェロセンの直結型のキラルフェロセニルホスフィンの合成を計画している。配位子の異原子,すなわちリンとイオウまたはカルベン炭素の相対的な位置関係,すなわち,シクロペンタジエニル環か,またはトリアゾール環に結合するかなど,トリアゾール環の置換基の電子的および立体効果に関して研究してゆく。
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